写真 「クロちゃん、こっち向いて〜」 「……」 「あ、このアングルも素敵。じゃ、こっち向いてみようか〜」 「……」 「うふふ、あら、こんなアングルも〜」 「……お前、何やってるの」 呆れた黒崎の目線には、彼の家に住み着いた黒猫を嬉々として携帯カメラで激写しまくる店子の姿があった。 「待ち受け画像をね。この子で作ろうと思って」 でれぇ、と、蕩けるような笑顔でそんなことをのたまう店子――吉川氷柱は、今や膝の上に抱き上げた黒猫の喉を撫でていた。 それはいいんだが。 ものすっごく不気味な風景だったのは、黒崎の気のせいだろうか。 「で、気は済んだか?」 「んー。まださ、これってアングルが取れないのよね」 難しい顔で呟く氷柱に構わず、黒崎は彼女の膝の上で寛ぐ黒猫の首根っこを掴むと、ぐいと上に引っ張り上げた。 「あ」 「こいつはお前専門のアイドルじゃないの」 立ち上がって言う。 まったく、人ンちの猫で何をやっているのか。 と、思ったその時。 カシャ。 「……は?」 「やった、最高のアングル」 携帯カメラを構えた氷柱が、満面の笑顔で声を上げる。 撮られたのは、まさか。 「お、お前、やめろ! それはっ」 「へっへーん。もう遅いもーん。えい、保存っ」 大慌てで携帯を取り上げようとする黒崎をかわしながら、氷柱は慣れた手つきで携帯を操作する。 ぎゃあぎゃあと共有スペースであるはずの廊下での一悶着の後。 「はい、出来たっ」 びし、と携帯電話を差し出す氷柱。 そこには、何とも間抜けな歳相応の顔をした、青年の顔が映っていた。 「あんただって、こんなに普通の顔できるんじゃない」 言って笑う氷柱に、黒崎は渋い顔を作ってみせた。 おしまい 凄いベタですが。 超突発ssでございます。 黒崎と氷柱ちゃんの関係は、漫才コンビのようだといい。 |